ぼくらはカエルとカタツムリと子犬の尻尾とそんなこんなでできているらしい。
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「やあやあお揃いだね」
「何の用でござる慶次殿」
「また上田の蕎麦が食べたくなっただけさ」
「ついでにまた佐助を殴ろうという腹積もりではなかろうな」
「んなことしねえよ」
「なれば重畳」
「なあなあ幸村」
「何で御座ろう」
「アンタあの忍のこと、どう思ってんのかい?」
蕎麦の器が手から落ちた。ざぱんと汁濁になった足元を見て、幸村は不快気に眉根を寄せた。
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「お前は某がお前のことをどう思ってるのか、わかるか?」
「何、いきなり」
「某はお前のことを優秀でこの上なく頼りにしておるのだが」
「や、なに、いきなり。話が全く見えないんだけど」
「しかし、もしお前が某を至らぬ主だと思うのなら、心置きなく別の主を探しに行っても某は引き止めぬ」
「なんでいきなり話がそっちに飛ぶの?嗚呼もう、どっか行ったりしないから余計な心配しなくて良いよ!」
「そうか。安心した。ところで佐助」
「なに」
「団子の後は煎餅と相場は決まっておるそうな。ひとっ走り行ってはくれぬか」
人を振りまわすのがお好きな主を殴って黙らせて、とりあえず原因を探そう。あと煎餅も。佐助は近くの枝に飛び乗った。
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「ってことなんだけど、アンタ旦那に何か要らんこと吹き込んでないよね」
「何で俺のところに直行なんだよ」
「悪影響及ぼしそうで尚且つ旦那が鵜呑みにしそうな言葉を吐く人。まあ下手人その一がアンタ」
「癪に触るな相変わらず。俺は見ての通り政務で忙しいんだ。同心ごっこなら余所でやりやがれってんだstupid!」
「ああ片倉さんにも苦労かけてるもんね。漸く周りの迷惑がわかるようになったんだ?少しは人間に近づけて良かったじゃない」
「Shit!うるせぇ、雑音で集中できねえ!さっさと帰って主婦業でもやってろ!」
「言われなくてもこんなとこ、用がなかったら来ないよ。邪魔して悪かったね、缶詰めご苦労さん。ついでに執政で失敗してくれたら、俺様アンタに惚れるけどね」
「気色悪いjoke言ってんじゃねェよ。目障りだ、消えろ」
「はいはい、ずんだ餅ありがとって片倉さんに伝えといて」
あいつ何敵の忍と馴れ合ってんだ!政宗は硯を引っ繰り返して天井を睨みつけた。もう政務など遣る気になれない。
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「腹立つあの忍!いつか腸掻っ捌きてぇ!」
「物騒なこと言うなよ。っていうかンなことわざわざ愚痴るために遥々四国まできたのか?天下の独眼竜にご足労頂くとは恐悦至極で片腹痛いぜ」
「日本語は正しく使うんだな、お前見た目とか見えねぇから。んだその髪、若白髪か?Ha−ha、可哀想に」
「本物の南蛮人を見たこともねぇくせに知ったか振ってんじゃねぇよ。自分の無知ひけらかすようなもんだぜ?」
「んなもんどうでも良いんだよ。ちったぁ付き合え。遠路遥々来てやったんだ。orgyやろうぜ」
「しかしあの忍、真田の教育係か?ンな用で来られても困るしよ」
「次会ったら殺す!」
「物騒だっつーの」
「お前のとこにゃまだ来てねぇのかよ。だったら今のやつ伝言しといてくれ」
んなことできるか。元親の言葉は、既に泥酔している政宗には届かなかったようだ。ぶつぶつと佐助や武田や周りの雑言を言っている彼を見て、どこかの客間に転がしておこうと元親はひっそりと決めた。
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「んで、その後に忍がきてやっぱり同じこと聞かれたんだけどよ、あいつって戦忍だろ?良いのか、仕事ほったらかして」
「さあねー。俺武田じゃないもん」
「お前だろ、原因は」
「あれ?なんか不機嫌だね。なんかあったのかい?喧嘩?」
「喧嘩も糞もねぇよ!元就と茶ぁするって約束をおかげでふいにしちまった!」
「あ、そう。毛利…中国ね、今度行ってみようかな」
「身軽なもんだな。羨ましい限りだぜ畜生」
「いいぜーしがらみがなんにもないから。諸国見聞、ご当地名産、粋なもんだ」
「で、やっぱりお前なんだろ」
「え?俺悪いこといったつもり全くねぇんだけど」
「こちとら被害被ってんだ!さっさと行かねぇと腹掻っ捌くぞ!」
何故か諸国が殺気立っている原因は自分にあるらしい。身に覚えが全くないので、何を謝りに行けば良いのか悉皆見当がつかない。とりあえず甲斐へ行こう。そしてまた蕎麦を食べよう。
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「幸村ー」
「また来られたのか慶次殿!」
そして繰り返す。
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ぼくらはカエルとカタツムリと子犬の尻尾とそんなこんなでできているらしい。
なのでぼくらは、学習する頭がからっぽなのさ。