観点なんて無意味なものは捨てろ。主演は俺だ。シナリオは要らない。アドリブで事足りるのだから。さあカメラをまわせ!
シェルドレイクの仮説
常々俺は駄目だと言われ続けてきたが、それほど重きを置くことでも無いと思っていた。別に駄目な奴は俺一人だなんて理不尽は絶対無いと甘えていたし、俺自身駄目だと度々思うこともあり、まあ他人の言うことって大概当たってるよねと諦め享受し首肯してきた(我が偉大な家庭教師様はそんな諦めすら駄目と嘲り罵って下さったけれど)。一応俺だって努力はしたんだと主張したところで周りの冷めた反応なんて想像に容易いし。だから全てってわけでは無いけど色々諦めた俺はそこそこ今の駄目ライフを満喫しているわけ。なのに、俺の無力を確定した上で何でやたら難易度が高い試練なんて用意するかな神様!?
「クフフ、わかりますよその気持ち。時として神は傲慢で理不尽だ。君の悩みも僕からすれば小さいものですが君自身にしてみたら多大な損害ですよね。可哀想なツナヨシ君、人格形成から失敗したなんて本当、笑えない冗談にも程がありますよね。これを機に僕と一緒に世界を見返してやりませんか?」
俺に理解あると思わせてさりげに悪口言ってますよね、前振り長いですけど要は一緒に世界破壊をやりませんかって言ってるだけじゃないですか!
「世界なんて大規模なもの、ちっぽけな僕には下らなくてその気になれません。無理です。マフィアだけ滅ぼせれば僕にとって本望なんです」
裏社会だってある意味世界より規模大きいよ!危険なのは寧ろそっちだよ!ていうか謙遜してるようで全くしてね―――――!!
「んもぅ、細かいですね。君のツッコミの早さはスタンディングオベーションに値しますけど、あまり物事に囚われ過ぎると禿げますよ。もうちょっと前向きに考えましょうよツナヨシ君」
後ろ向きにマフィア殲滅掲げている人にだけは言われたくないんですけど!そりゃあリボーンが来て問題が増えて、最近俺抜け毛が多いななんて考えなかったわけじゃないですけどね!そんなの年食えば誰の悩みにだってなるさ!いつの間にか頭皮を直に触れるなんて嬉しくないオプション誰だって付くさ!うわぁぁあん、気にしてるのに!
「…君って時々深い墓穴を掘りますね」
うるさい!誰が好き好んでマフィアのボスになったりマフィア殲滅に手を貸したりするんだよ!問題を起こすなら俺のいない世界でやってくれ!俺は一般市民が夢なの!大それた希望なんて疾うに諦めました!物事に無関心な疲れたリーマンを目指すの!
「…君が不憫で仕方ないのですが」
同情するなら他を当たって!俺は当たり障り無く生きたいんです!
奴は黙った。今まで言いたいことを脳味噌の中に止めるだけで何の反応も返さない俺に呆れたか。初めて俺の勝利!?やば、泣きそう、あ、じんわりきた。
「涙目で睨まれるのもぐっと来るものがありますが…そんな変態を見るような目で見ないで下さい。僕は誰にでもこうというわけでは無いですよ。ところでツナヨシ君」
「…なんですか変態」
「変態じゃないですって。まあ、そのことは保留としておきます。後で覚えておいて下さいね?クフフ、今までの会話・・・と言っても傍目から見れば僕が一方的にしゃべってるように見えますが…気付いてないようですから教えておきます。君の思ってることは筒抜けですよ?」
「だから勝手に読まないで下さいってこれ何度目ですか――――!!」
まだ、彼への対処ができない頃の不毛な会話。現在記録更新中。
2006.9.27.