マルクト
「いやぁ、アクの強い奴だとは思うな。頭も悪くないようだし。ただ、あの性格がな…」
「あなたも程度こそ違えど、似たような苦労を部下にかけていることに早く気づいてください」
「まあ、ルークのあれは最早生まれつきみたいだからなぁ、あそこまで行けば」
「おやおや、一番被害を被っているのにあなたは然程堪えていないようじゃないですか」
「あはは…あれはあれで、可愛いところもあるんだぜ、旦那。何だかんだ言って変わらずにんじん嫌いだしな。好き嫌いに関する小言は、一応怒らずに聞いてるんだよ」
「…ガイラルディアがルーク殿に子離れできてないことはよくわかった。しかし俺は初対面であれだぞ? 何か気に障ったことでもしちまったか、俺」
「陛下はあれですよ、ほら。ジェイドの幼馴染みということもあって警戒してたんじゃないですか?」
「ほーう。そうなんだと、ジェイド」
「ひどいですねぇ、ガイ。私のことをそんな風に思っていたんですか?」
「いやぁ、それは……」
「にしても、女性にも容赦ないんだなぁ。びっくりしたぜ。前触れもなしに床に叩きつけるんだからよ。俺には理解できん」
「まあ彼女たちに於いては、わからなくもありませんけどね…」
「唯一ルークに直接何かされてないのって、イオンだけじゃないか?」
「イオン様は体も弱いですからね。さすがにやりすぎたら死んでしまうかもしれない人間に手出しするほど、堕ちてはいないのでしょう。そのかわり、最高指導者として必要最低限すら学べていないのかと、ひたすら辛辣に諫言をくれていましたが」
「アニスもなぁ…よせばいいのにイオンの分まで怒るからなぁ」
「しかし守護役は導師の心身を守るんだろ? 別に問題はないように思えるんだが…」
「いえいえ陛下、そこは相手もさることながらですよ。アニスの至らない部分をピンポイントで突付き倒すのですから、今やアニスも迂濶にルークへ文句を言うこともできません」
「言ってることはいちいち間違ってないからなぁ。預言のない世界って、あんな性格の人間になれるのか…」
「あんな風になってしまったら、何か人として大事なものを失いそうで限りなく嫌です」
「ははは、それを旦那が言うかぁ」
「ガイー?」
「…? よくわからんが…。ところでルーク殿がオリジナルをこれ以上なく嫌ってるらしいが…あれも何かやったのか?」
「何かやったも何も、はじめはアッシュもレプリカであるルークを殺す勢いで憎んでましたからね。仲良くなれという方が無理なのでは?」
「あ、俺もそれはルークに聞いてみたんだが、 『レプリカが持たない記憶を持ちながら、拒絶されるのが恐くて親からも預言からも逃げ回ってたくせに、いざ終わったらのこのこ八つ当たりにきやがって、迷惑千万だっつーの』 だってさ」
「…まあ、真理だな。人間的な感情を差し引けばの話だから、なかなか厳しいが」
「あと 『俺の兄貴と同じ顔するな。ぶっ潰したくなる』 って…」
「明らかに後半が本音ですねぇ、あはは」
「? レプリカに兄弟はいないだろう…?」
「え、あ、それはいろいろありまして…」
「私にも上手く言えません。ただ…、ガイが説明してくれるでしょう」
「ちょっ! 旦那ぁっ?」
「それでは陛下、私は仕事がありますので、これで」
(逃亡)
ダアト
「…や、なんていうか、迂濶にふざけらんないっていうか…」
「毎回毎回、ちょっと度が過ぎると思うわ」
「ティアはまだいいよぅ。あたしなんて、ムキムキマッチョにされて街を歩かされたんだよ? 恥ずかしくて死んじゃうかと思った…」
「あのときのアニスはすごかったですよねぇ」
「イオン様! 思い出さないでください! あれが知り合いに知られたら、あたし本当に生きていけなくなっちゃいますぅ」
「初めてロッドから血が流れたときは、本当に驚いたわ…大佐なんて 『おやおや、今まで倒した魔物や人の怨念ですかねぇ』 って言ったのよ。……あのときほど音律士を辞めようと思ったことはなかった…」
「確かにアレはホラーだったよね。寧ろスプラッタ? ロッドって鈍器になりそうだし」
「滅多なことを言わないでアニス!」
「イオン様に見えなかったのは良かったけどさ」
「ルークは元々優しかったのです。ただ、それを表にする方法がわからなかっただけで」
「いやいやいやイオン様! それはボケですか、ツッコミ待ちですかっ?」
「そんな気を回すくらいなら、初めからやらなければいいのに…何故ああも人を翻弄するのが好きなのかしらね…」
「ライフワークになってるんじゃない? 呼吸をするのに等しく! 一挙手一投足にトラウマをっ!」
「………………………」
「………………………」
「………………………」
「…やめよ。本当だったらあたし立ち直れない」
「ええ。考えてはならない域に達しそうだったわ…」
「ルークは多才ですよね」
「そういう問題ではありませんイオン様!」
(迷走)
キムラスカ
「………………………………」
「……まあまあアッシュ、そのような険しい顔をしては、そのまま癖になってしまいますわよ?」
「…ナタリア……何故俺はキムラスカ所属になってるんだ…」
「もちろん、あなたが公爵子息だからですわ」
「レプリカがいるだろう!」
「ルークはいけません。確かに政治向きの考えをしているようですが、周りへの影響が大きいですし」
「その一言にあいつがどういう奴かが集約されてるな…」
「それに、仮にルークがあのままの性格でしたら、お父様と叔父様が過労で死んでしまいます」
「………ああ。そういえば、今も父上や叔父上は臥せっておいでだったな…一体何をやったんだあいつは……」
「何でも魔法少女という衣装を、よりにもよって議会の最中に着せたらしいんですの。その影響で元老院の貴族方にも、体調を崩されて顔も出せない方が続出しているとか。お父様の威厳は最早地核を撃ち抜く勢いで低迷していますのよ…」
「それで、あいつは今どこにいるんだ」
「叔母様のところですわ。ルグニカ紅テングダケを差し上げると言って」
「キノコロードイベントスルー!?」
「体が弱い方にはルークも丸くなるようでしてよ。イオン様も、ルークの暴挙の直接の被害は受けていませんの」
「直接攻撃されたら、いくら導師でも死ぬだろう……ああ、あいつはそれをわかってんのか…」
「いい加減にアッシュとの仲も修正して欲しいですわ。今も時々、ルークにどこかへ飛ばされることがあるのでしょう?」
「何が気に食わないのか、機嫌が悪いときは問答無用でな……クソ、俺が何をしたっていうんだ」
「一度聞いてみましたが、 『顔』 の一言でしたわ…自分と同じ顔ですのに……それとも、自分と同じ顔だからでしょうか?」
「何か釈然としないな…そういえばあいつ、初めて俺を見たとき兄貴って言ってたな。誰のことなんだ?」
「さあ…わたくしにもよくわかりませんの。ジェイドやガイやアニスはわかったみたいですけど。今度聞いてみたら如何が?」
「聞いて素直に答えてくれるようなメンバーじゃねぇ…」
「それにしてもルークのあの能力、便利なのか不便なのかわかりませんわ。わたくしたちが自分で調べるまで、絶対に情報を教えてくれませんのよ。 『調べるその過程にも意味がある』 とか言って、第六譜石の預言も言ってくれなかったですわ」
「意味があるって、まるで全部知ってるみたいで薄気味悪ぃな」
「悪かったな薄気味悪くてよ」
「………っ?……………っ……っっ!」
「あらルーク。叔母様へのお見舞いはすみまして?」
「ああ、シュザンヌ様のアレは疲れが原因だな。しばらくお話させていただいた後、眠られた」
「んもう、そのような他人行儀な呼び方では、叔母様も悲しまれてしまいますわよ!」
「なら、そのアフターケアは息子の仕事だな。おら、何ぼさっとしてんだ。親父が胃潰瘍で死んでるぜ」
「誰のせいだと思ってるんだこの凶悪レプリカァァァア!」
「うるせぇ、ライガの腹ん中に飛ばすぞコラ」
(継続不可)
おまけ
「………何か弁明は」
「……………ならば言わせてもらおう。確かにバチカルまでは、計画通りだったんだ!」
「その挙げ句に六神将のほとんどが壊滅してる現状を見て、まだ言うか、この髭面ァァァア! ラルゴなんて、マルクトで受けた傷が祟って、あれ以来ずっと引き篭ってんだよ! アンタの顔見るたび思い出してぶるぶる震えてるラルゴを慰めてるアリエッタの身にもなってよね!」
「シンクやめろっ! 閣下はまだ眉毛と髭の傷が癒えていないんだぞ!」
「知ったことか! どうせそれもあの頭がおかしいレプリカのせいだろ! アンタがあんな規格外なレプリカ作ったから……っ! クソ、思い出したらまた吐気が…!」
「ところで閣下、このチラシは一体どこで撮ったんですか?」
「リグレット! 私は冤罪だっ!」
「いえ、閣下がこういうご趣味とあらば、それはそれでおもしろ…失礼、私の預言を憎む気持ちは変わりません」
「その冷たい目はやめてくれリグレット!」
「うわぁぁああん! ラルゴが、ラルゴがっ!」
「ああああチクショウ! 何でオリジナルもレプリカもまともな奴なんていないんだよ!」
(収拾不可)
(090108-090627)拍手掲載