(彼の供述)
だって、普通はそう思うだろ。
貴族の屋敷に断りもなく入れば即座に首が飛ばされるのなんて、下層に住むスラムの子供でも知っている。況してやあの女は情報部? とかそんなところに所属しているんだから、他国の常識の土台たる基礎的な身分制度は知ってるはずだろう? しかも何かユリアとかの聖女の子孫らしいし、そこらへんの教養は身についてると思って然るべきじゃないか。
そう、思うだろ、普通は。
─── 何だよ。俺、変なこと言ったか?
ジャキン! がこん、 ごとん、
今まさに使用された、血痕とかそういうのを見るだになかなか年期の入っている断頭台に、ぬるりと真新しい血糊が伝うのを、ジェイドもイオンもアニスも青褪めた顔で見ていた。
こういった公開処刑はよほどの重罪でなければ行われないほど一般市民にとって忌避すべきものであり、時にはあっという間に戦時中の娯楽になりかわる残酷なものである。
今は厳かに落ちた首と、虫の標本のように磔にされた体を下ろし、運び出している。その指示をするルークは、どこか安堵したような、ホッとしたような顔をしていた。弑される理由がわからない彼女の最後の慟哭を聞いても尚、何故そんな顔ができるのか、イオンやアニスはわかるまい。かくいうジェイドもその辺りの事情を把握しきれていない。
知っているのは、この国は身分というものに他国よりも重きを置いているということと、たった今命の火を消された彼女がこれまでやってきた、殺されても仕方ないほどの所業だけだ。だから、ルークの安らいだ顔の理由がわからないのである。
あれよあれよという間に断頭台を昇らされ、死んだ彼女の死刑に文句を言う暇もなかったか、今になってイオンは震える声でルークに問いかけた。
「る、ルーク…っ! なぜ…なぜティアとヴァンを殺したんですか!」
「殺さなきゃいけないからさ」
「だから、どうして……!」
「イオン。この国は王政で、頭なる王とそれに連なる貴族で成り立っている。いうなれば、大なり小なりの貴族階級の人間が施政をしていることになるんだけど、それはイオンも知ってるよな?」
「それとこれと何の関係が…」
「つまり、他国の人間にナメられたら駄目なんだよ。周りに示しがつかなければ、キムラスカの政治態勢が瓦解してしまうから」
言葉に重量があるなら、疾うに膝をつかされるほど重い言葉だった。
ルークは厳しく断頭台を見つめている。まるでまだ死刑にすべき者が残っているかのように。
「これでも俺は、あいつの考えたことを推察してみたんだ。あいつはヴァン師匠を殺そうとして、ファブレに押し入った。それだけの覚悟と、それだけの理由があったんだと思う。当然失敗すれば自分が殺されることも可能性に入れなければならない。もし失敗してしまったら? ヴァン師匠が生存してしまったら? そう考えてダアトの軍服を着込んだまま襲撃し、ダアトに介入する隙を作り、代わりにヴァン師匠を処断する口実を見つけるように示唆をした。しかし最低でも血縁のある家族だ。余計な不名誉を加算するのは心苦しい。ならばそれを超える不敬をすればと考えたと、俺は思ったんだがな…」
仕方ないなというようにため息を吐くルーク。
されど彼の思考は、どこまでも責任を自分ひとりに背負う誇り高い王族の考え方だった。彼はきっと、死の際に立たされ、わからない内に泣き喚いていたたった十六の彼女の姿を、最早記憶に留めていないに違いない。
「そこまで、ここに来る前に考え、全て手配したのですか…」
「ああ。イオンには悪いがダアトも裏から洗ってみた。聞いたところによるとな、ヴァン師匠は、預言に従属しきるこの世界を滅ぼそうとしていたらしいんだとさ。しかも秘預言と呼ばれる第七譜石はこの星の終わりを記し、我が国でしきりにマルクトとの戦争を促す大詠師は導師イオンを毒殺せしめてイオンレプリカを作成したという裏も取れてしまった。これがどういうことかわかるかイオン」
イオンは今にも倒れそうなほどひどい様相で、けれどルークから目をそらせずにいる。ルークはにやりと笑ってイオンに最後通喋を叩きつけた。
「この処刑にかけられるのがユリアの子孫だということも、大詠師が上層部をたばかったということも、既に公表している。事実がどうであれ、国民は己だけの真実を以ってしてダアトに恨みの矛先を向けるだろう。わかるか? ダアトはもう、どこからも信用を得られないただの宗教団体になりさがったんだよ」
この分じゃ大詠師も死刑だろうなと呟くルークに見開いたアニスの目が揺れた。しかし、その火の粉が自分にも降りかかって来る恐れに気づいているのだろうか。
「まあ、報告じゃティア・グランツは隊の中で正義感ばかりが先行してチームプレイを乱す厄介者だったらしいし、今殺さなくても勝手に自滅してくれそうだったけどさ。あんなんが子孫のユリアも、たかが知れてるよな」
笑ったルークは面倒事が減ったと手を叩いて喜んでいる。
奇しくもそこに被験者がいると知らないキムラスカは、これからも表向きはひとつの統治国家として平和なままだろう。
***
厳しめ(ダアト)/
ルークはスレよりも賢い方が好みです/
ティアがヴァンを公爵家で襲ったのは例え失敗したとしても兄もろとも不法侵入の罪で殺されるためだったら?
と考えたルークがその通りに処刑してあげる。
襲撃理由を答えなかったので、どんどん裏読み(兄に最後の情けを送るためとか)、ダアトの制服を着たままなのはそこにこそ秘密が隠されているので監査にはいってほしかったと考え、精鋭部隊を送り込んで人類破滅計画?ゲット
「こんな理由じゃ無理心中はかるよなー」とか言って欲しい。
でもティアの性格は聖女じゃなくただの自己中で元同僚とかからネタバレとかして、結局似たもの兄妹達が消えただけ(含むダアト)
ということでダアト厳しめ。事後。
このルークはどれだけ深読みしたんだろうか。人間不信の域じゃないか(笑)
ちなみにガイは空気です。気がついたら存在そのものがないです。
ルークに処分されたか、いい子で留守番してるか、お好きな方を。
余談ですが、これと同じリクエストが他サイト様のところでもあったのですが…?
リクエストありがとうございました。
(090219)