*melancholy of Suzumiya Haruhi/KK+a*




「正直あなたの人となりを自分なりに観察して、少し失望しました」


そりゃどうも、勝手な話だな。


「涼宮さんが選んだというのだから、またまた聖人君子のように素晴らしい人格をお持ちかと思ったんですがね、どうやら僕の思い違いのようです」


うわ、気持ち悪。さぶいぼ立ったぜ。なに、人にそんな幻想抱いてたわけお前は。


「あなたに何がわかる。三年前この世界が改変されたときに僕たちは生まれたと同義なんです。僕たちには彼女しかいない」


『僕たち』が指すものが俺のような一般人を含んでいないことに、この独りよがり野郎と胸中で毒を吐いた。その偶像崇拝主義には吐気がするぜ。お前らはいきすぎたアイドルのファンクラブか。


「…どうも顔の良さと反比例してお前の頭の螺子は抜けてるようだな」
「…どういう意味ですか」


奴が険悪に睨む。だが俺はこの勘違い野郎の目を醒まさせてやるほど好い人ではない。人間何事も浅慮や短慮はいけないな。
視線を無視して俺は教室に戻る。いかん、昼休みがあと少ししかない。


「待って下さい!」


待たん。
なあ古泉。お前はハルヒのことを、母親か海だと思ってないか?例えハルヒに一存で世界を変えられる力があったとしてもだな、本人が自覚していない限り、ちょっと夢見すぎな高校生なんだ。あれは普通の女の子なんだよ。







*SilverSoul/OS*




ノックしても返事がないことを理由に、普段は入室許可が降りないと入れない私室に忍び込む。足先を慎重に床につけ、部屋の真ん中で転がっている奴を見つけた。
顔の真横にものぐさに放置されている携帯に鼻を押し付けるようにして、健やかな胸板が上下している。腕は適当に投げ出されていて、の割には足は行儀良く折り畳まれていた。窮屈そうに寝ているのは、枕を持ってくるのが面倒だったのだろう、敷布団を僅少折り畳んでいるからだ。


「起きやがれィ」


覚醒を促し蹴り上げると、面白いふうに足が跳ねた。ごち、とわりかし痛そうな音の後、むずがるような声が漏れ聞こえたけれど、目覚める気配はない。
もしかしたら疲れているのかもしれない、なんて慮りは、沖田にはなかった。マウントポジションになり、頭を叩く。
だって、せっかくきたのに寝られていちゃ、つまらないというもの。







*REBORN/6927*




くふ、と殊更嬉しそうに奴は笑った。面と向かって告げると調子に乗るから言いにくいが、奴の顔面は一般的に見て賛美されるべき部類である。しかし中身がこの上なく崩壊していて、頭の弱い気の毒な人間なので帳消しだ。


「貧弱な君に言われたくないですよ」
「人類は押し並べて貧弱だって、骸は聞いたことない?」
「さあ。そんなことは聞いたこともありませんね。何分、長い間寡聞にしていましたから」
「そりゃ不幸。そんで俺にとっては幸福」
「舐め腐った度胸になりましたね君は。可愛らしさを置いてきてしまったんですか?」
「時間は人を変えるさ」


冷酷無比で、少なくとも市電よりは確実な時間は、俺の中身も奴の中身もすっかり変えてしまったようだ。







*REBORN/1827*




嘘吐き。ほら、記念日に何かくれるって言ったのに、記念日からちょうど一年経っちゃったよ。病院の人、何も言わずに頭を下げ続けてくれたんだ。きみがまだ暖かかったときは怖くて(何に?)触れなくて、漸く葬式で触れたときにはもうきみは硬く冷たく重くなっちゃった。ねぇ、きみが憎いよ。悲しいよ。何人身事故で死んじゃってんのさ。中学のときのまま、脆弱で育ったわけじゃないだろ?死因がこんなにも(マフィアにとって)普通じゃ笑い話にもならないじゃないか。
ねぇ、沢田綱吉。きみがどうしようもなく憎いよ。
人を呪わば穴二つ。きみを怨んで僕もきみと同じ穴のムジナになろうか。







*However, dragons dance ,,,/GG*




理不尽な暴力を受けるのなら、俺はお前の方が良かった。最悪な責任転嫁のこの言葉を欲のひた走るままに言えたらどんなに良いことか。
俺の殴打痕の激しい顔を、治癒咒式をつむぐことすら放棄して、ただの血色の悪い白とは明らかに違う純粋な白い手が辿る。痛い。めちゃめちゃ痛い。けれど俺が嫌がることを喜色満面にやりたがる奴に隙を見せると、そりゃあもう嬉しそうに傷を抉るので飽くまで無表情の俺。痩せ我慢。


「ペットの貴様に大人しく殴られる許しをやった覚えはない」
「お生憎様だがな、俺はお前のペットになった覚えすらねぇんだけど、」


ギギナは秀麗すぎる顔を憮然の色に染めた。
神は二物どころか三物までもこの男にくれてやったらしい。問答無用で人類に通じる銀箔の美貌は主にプラス方面で、戦闘狂を凌駕してしまい兼ねない戦闘好きで、許嫁というものまであるくせにこのエリダナに数多くの愛人を有し、実は女たちが喉から手を出して欲しがる彼の興味は完全に家具へベクトルが向いており、椅子にヒルルカと名付け愛娘だと公言する痛々しい性格はマイナス方面に作用している。唯一俺が奴に勝る口喧嘩で劣勢の色を見ると刀を振り回す人格破綻者は言う。その傷は誰がやったのだ、と。教える義理なんざねぇよ。
嗚呼お前の理不尽な暴力は、日頃から慣れているから、多分耐えられるかもしれない。
つい口に出しそうになった俺は最低だ。







(071117-080211)