家の外は暴風雨。お天気お姉さんの天気予報はドンピシャリ。本日は学校も休みになり、家に閉じこもっていなければいけない。

「雨やまないッスね」
「ああ」
ＷＯＬ家の居間でニュースを見ていたスコールとティーダは映し出される映像に「はぁっ」と吐息を漏らす。いつもなら「学校が休みになったッス！」と喜ぶティーダがつまらなそうにチャンネルを変えていく。
「…クラウド、帰ってこないッスね。」
「そうだな。」
二人のテンションが低い原因はＷＯＬ家次男であるクラウドが不在であることだった。彼は昨日から友人であるクジャの家に泊まり込みで手伝いに行ってしまっており、この天気では帰ってくるのも大変だろう。
更にオニオンナイトはティナとセシルの家に遊びに行っており、ＷＯＬとフリオニールは「こんな日こそ出勤しなければ」と言って職場に向かった。
その為現在家の中には二人しかいなかった。普段賑やかな家は何とも寂しく感じてしまう。
「…スコは寂しくないッスか？」
「…うるさい」
スコールのイラつきが面白くて思わず顔がにやけるが、ギラリと鋭く睨まれれば顔を反らすしかない。そうして反らした視線の先には激しく窓に叩きつけられる雨。
「雨、止まないッスね。」
「そうだな。」

「雨、止まないな。」
「そうだね」
猫部屋で仔猫達と遊んだ後、特にやることが無くなったクラウドはスケッチブックにスラスラと何かを描くクジャの横でぼんやりと窓の外を眺めていた。
テレビも特に面白くないし、この家にあるDVDは全て見終えている。
「…クジャ」
「悪いけど、僕忙しいんだ。君と戯れている暇はないよ」
スッパリ言われて頬を膨らませるが「ふぐみたいだよ」とクジャに言われてしまい、それ以上何もすることが出来ない。
いい加減つまらなくなりクラウドは先日クジャが買ったばかりのパソコンを起動させた。
ノート型のそれには表面に女子高生が使うようなラメが使用されており、見るだけでキラキラしており、クラウドは勝手に光ピーと呼んでいたりする。
仔猫達用に何か遊び道具でも通販しようか（もちろんクジャの負担）とネットサーフィンを楽しんでいると、ピンポーンっと玄関の呼び鈴が鳴った。
「新聞はいらないよ」
クジャの言葉に何かもらえるんなら勝手に取ってしまおうと玄関のカギを開くと、
「クラ兄ぃ〜！！」
「てぃ、ティーダ？！」
ずぶ濡れになったティーダが嬉しそうに抱きついてきた。
「俺は止めた。」
「スコールも？」
スコールの手の中には折れて悲惨な状態な傘が二つと一応まともな傘が一つ。
「クラ兄に会いたくて来ちゃったッス！」
「この嵐の中を…か？」
クラウドはスコールに視線を送るが、スコールはそれをサッとかわす。
「スコだって一緒に来たがってたっス！」
「言ってない！」
未だクラウドに抱きつくティーダを引っぺがしながら、スコールはクラウドに折れていない傘を差し出した。
「帰ろう」
スコールがあまりに真面目に言う物だから、クラウドは一瞬止まった後吹き出してしまう。
「帰ろうってスコール…外大雨だし、傘一つしかないじゃないか？」
「俺達はもうびしょぬれだから仕方ないッスよ！」
「どうせ濡れるからいらないな」
帰ろう帰ろうとせがむティーダに困っていると、

「ぎゃああああああー！！」

クジャの叫び声が聞こえクラウドは急いで室内へと戻る。
ティーダとスコールも顔を見合わせそれに続く。

部屋に戻ったクラウドが見た光景は…
「…うわぁ」
勝手に外に出ていたのだろう。泥んこになった身体で室内を飛び回る、仔猫達。
床に足跡をかわいく模様を描き、真っ白だったソファーは独創的な柄に。
「ストライフ―！！」
激昂するクジャ。その視線に映ったのは、ずぶ濡れのまま室内に上がり込み仔猫を見つけて喜ぶティーダと、実は嬉しそうなスコール。
「あのなクジャ…」
「一刻も早く風呂に入って綺麗にすることだよ！！」
何を？と聞く前にクラウドはティーダとスコール、それに仔猫達を風呂に突っ込み、掃除に取りかかる。風呂から上がった二人にクジャがくれた服（クジャブランド）を渡し、掃除を手伝わせた。
その後昼に出前を頼み（哀れ配達員）クジャは作業の続きを、クラウドとティーダは猫用品を選び始め、スコールは仔猫達と遊んだ。

「じゃあまたなクジャっチ！」
夕方頃。ようやく通り過ぎた台風。雨も上がり風も弱くなった為、兄弟達は自宅へ帰ることになった。
元気よく手を振るティーダにペコリと頭を下げるスコール。クラウドは特になにもせず歩きだす。クジャは嵐が去った室内でクラウドが勝手に頼んでいた物を確認して溜め息を吐くのだった。